孫子の兵法

属人性を排除せよ

2018-11-29

 日本国内は、2019年4月に施行される「働き方改革」関連法の影響が出る前に、人手不足感が高まっている。今でも人が足りないのに、さらに休みを増やし、労働時間を減らしたらどうなるのか・・・。パート・アルバイトの比重が高い職場やそもそも社員数の少ない中小企業では人のやり繰りもできなくなるのではないかと心配していたら、外国人労働者の受け入れ拡大という話が出て来た。出入国管理法を改正し、数十万人規模の受け入れをしようとしている。
 目先の労働力確保を考えれば移民受け入れ、外国人労働者受け入れの拡大という手段が手っ取り早いが、日本人がやりたくない、キツくてヤスくて夜オソいような仕事を外国人にやってもらおうなどと言う手前勝手な受け入れは、将来必ず問題を生じさせると思う。日本の景気が良くて円の価値も高いなら、多少我慢して頑張ろうと思う人間もいるだろうが、同じ「人」が同じ国で目の前にいるのに、自分たちがやりたくない仕事を押し付けられていると感じたら暴れ出す人も出てくるだろう。その数がまとまれば大きな社会問題になることは必定だ。今でも技能実習生の待遇問題や失踪問題が解決できないのに、この枠を広げてうまく行くとは到底思えない。

 と、まぁここまでは、理想論というか、あるべき論というか、キレイ事であって、この現実の中で戦わなければならない孫子兵法家としては、四の五の言い訳を言っている場合ではない。人もいない、外国人も使わざるを得ない、働き方改革もやるしかない、という状況の中でどう戦うかを考えるしかない。ここでブログを書いていても人口が増えるわけでも、素敵な外国人ばかりが日本にやってくるようになるわけではないからだ。
 孫子は、

『善く戦う者は、之を勢に求め、人に責めず。故に能く人を択びて勢に任ず。勢に任ずる者の、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静まり、危うければ則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仭の山に転ずるが如き者は、勢なり。』

 と言った。個々の人間を取り上げて、あいつが良い、あいつが悪いなどと人のせいにするのではなく、組織全体の勢いを作り出せと言うのだ。丸い岩が坂を転がり落ちるような勢いがあれば、四角い岩も枝の張った木も土石流に巻き込まれて大きな力を及ぼすことになる。
 そもそも日本人の採用も、企業規模が小さくなればなるほど非常に厳しい。求人を出しても応募もない。時給や給与を引き上げても大手の求人はそれ以上の条件だったりするから効果なし。そんなことをしていると既存のパート・アルバイトや社員の時給や給与も上げざるを得なくなる。滅多に応募もないから、面接も形だけのもので即採用だ。働きが悪くても、物覚えが悪くても、仕事が遅くても、いなくなっては困るから文句も言えない。厳しい指導をしてパワハラだ何だと言われたら余計に面倒だ。そんなことならいっそ外国人を雇おうという話になるわけだが、そんな職場にビックリするような優秀な外国人が来ることはないし、少なくとも日本語でのコミュニケーションには壁があって意思疎通も図りにくい。安く雇えるかと期待しても、現状では中間で紹介するブローカーのような人もいてトータルコストが下がるわけでもない。
 誤解があってはいけないので触れておくと、優秀な外国人労働者がいないわけではない。弊社にも中国人の社員がいるが、日本人と同じ日本語の試験を受け、日本人でもかなり低めの合格率なのに合格して、面接も普通に日本語で受けて入社してくれていて、条件も同一だ。多少イントネーションがおかしかったりするが、日本語でのコミュニケーションに全く問題はないし、彼らには中国語が話せるというアドバンテージまである。それは、日本人が雇えないから仕方なく外国人を求めた訳ではなく、普通に採用していた枠に外国人が応募して合格しただけのことだからだ。
 ともかく、これから人材の量はもちろん質の確保が難しくなり、外国人労働者など多様性も増す。ダイバーシティなどとカッコいいものではなく、混沌としたカオス状態に陥る職場もあるだろう。そして働き方改革だ。休日を増やし、時間を減らせと圧力がかかり、その中で付加価値を上げて行かなければならない。
 今こそ、仕事の属人性を排除し、IT化を進め、AIを導入し、ロボット(自動作業機もしくはRPA)も使えるものなら使って、誰がやっても、どこでやってもいいような組織作り、プロセス改善、業務標準化を進めるべきである。ITやAIの活用については、拙著「AIに振り回される社長 したたかに使う社長」(日経BP社)を参考にしていただけば良いが、角ばった岩も、枝の張った木も、まるで丸い岩や丸太のように転げ落ちるようにするには、組織の勢いを作り出す仕掛けが必要なのだ。

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