孫子の兵法

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孫子×DX DXを成功に導くダム

2024-05-21

 まだ決戦は始まっていない。負けない態勢を作り、イザ戦う時、雌雄を決する時のために準備をしている段階である。その戦う準備の仕上げはダムを作ることである。これが積水の計だ。
 水を堰き止めダムを作る。一度ダムを作れば、徐々に水が溜まって行く。じわじわとだが確実に水位が上がって行く。ダムに満々と水が蓄えられた時が決戦の火蓋を切って落とす絶好のタイミングとなる。孫子は、軍形篇の最後に、次の勢篇につながる積水の計を説いた。

<軍 形 篇>
 『勝者の民を戦わしむるや、積水を千仭の谷に決するが若き者は、形なり。』
◆現代語訳
 「戦いに勝利する者は、人民を戦闘させるにあたり、満々とたたえた水を深い谷底へ一気に決壊させるような勢いを作り出す。これこそが勝利に至る態勢(形)である。」
◆孫子DX解釈
⇒コツコツとデータを蓄積し、データのダムを作り、そのデータを活かして勢いを作り出せ。

 戦いで勝利するには勢いが必要である。その勢いを生み出すには溜めが必要となる。高くジャンプするためには一度しゃがみ込まなければならない。その喩えが積水である。戦争の場合には水攻めがあるので、本当に水を溜めることもある。しかし、それを現代の企業経営やDXに活かそうと思うなら、水を溜めることにこだわっていてはいけない。その本質は何か、その心は何か、その意図はどこにあるのかを考えよう。
 勢いを生み出すために溜めるものとは何か。お金もあるといいだろう。人も揃えた方がいいだろう。物資もあった方がいいろう。だが、それらには物理的限界がある。もっと無尽蔵に、もっと莫大な量を、千仭の谷にドッと解き放っても良いようなものはないだろうか。
 ある。情報である。デジタルデータである。いくらあっても嵩張らない。使っても原本は無くならない。まさにDXの要諦をなすデジタルデータを溜めるべきなのだ。
 データの中でも一番有効なのが、顧客のデータである。顧客に関するデータがあればあるほど良い。業者から買って来ても良いし、調査しても良いが、日々自社の人間が顧客と会い、会話し、やり取りをしているのだから、そのデータを溜めよう。今すぐに。明日からではなく今日から。ダム(データベース)を作って溜め始めるのだ。
 一度ダムを作れば、日々データが溜まって行く。じわじわとであっても確実にデータは溜まる。間違って消去したりしないかぎり蒸発してしまうこともない。
 ダムがだんだんと大きくなり、ある程度データが溜まったら、分析してみよう。デジタルデータなのだから分析も簡単だ。顧客を分類して構成比を見てみよう。そのカテゴリーごとに売れている商品やサービスを並べてみよう。前項で、KPIを決め、可視化しているはずだから、その経営コックピットを見てみよう。特徴的な動きがあれば、そこのデータを深堀ってみよう。
 これらのデータがすべてイザ戦う時の指針となる。戦略決定の基礎となる。どこでどう戦うべきかを決める重要な指標となるのだ。自社にとって意味のあるデータが取れたら、そのデータを売ることも考えてみよう。やろうとしていることは単なるシステム導入ではなくDXだ。情報が売り物になる。データが財産になるのだ。そうすれば、戦いに有利になるだけでなく、さらに新たな収益源も生まれ一挙両得となる。
 データの蓄積をすぐに始めること。それが積水の計である。溜めることは簡単だ。難しいことではない。しかし、イザという時になってからデータが欲しいと思ってもすぐには溜まらないのがこのデータというものである。今すぐ顧客のダムを作ろう。

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