孫子の兵法

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孫子×DX 社員に自信を持たせる

2024-03-15

 ノーコーダーを養成する中で、自社を良くしようとする当事者意識と他者を巻き込むリーダーシップを持った人間を抜擢して、DX推進リーダーに任命したい。必ずしもデジタルが得意である必要はない。ノーコードツールを使えれば良いのであって、大切なことは当事者意識であり、自社を良くしようという思いである。
 そして、DX推進リーダーに選ばれた人には、DXの本質を理解してもらっておくことが重要となる。それによって、孫子が言う「兵を知る将」となり、「民の司命、国家安危の主」となることができる。

<作 戦 篇>
 『兵は勝つことを貴び、久しきを貴ばず。故に兵を知る将は、民の司命、国家安危の主なり。』
◆現代語訳
 「戦争では速やかに勝利を得ることを重視し、長期化することを評価しない。だからこそ、こうした戦争の利害・得失を理解している将軍が、人民の死命を制するリーダーとなり、国家の命運を司る統率者となれるのである。」
◆孫子DX解釈
⇒長期プロジェクトにせず、まずは短期プロジェクトで成果を出せ。社員に勝てる!やれる!という実感を持たせることのできる人間がDX推進リーダーとなるべきである。

 DX推進リーダーなどと呼ぶと、やはりデジタルに詳しい人間でなければならないのではないかと思うかもしれないが、そうではない。この段階で大切なことは社員の過半が「これならやれる」「これならできそうだ」「これなら勝てる」という自信を持つことである。人間はできそうだなと思うからそれに向けて努力するのであって、自分にはできそうにないと思えば、あれこれ理由をつけ、言い訳をして拒否したり否定したりするものだ。
 その意味では、DX推進リーダーは、それまでデジタルとは無縁で、どちらかと言えばアナログな人だと思われていたくらいの方が適任であるとも言える。そんなアナログな人が、ノーコードを学び、ノーコードツールを使いこなして、ちょこちょこっと自作の業務アプリを作ったりすると効果てきめん。「あの人にもできたのだから、自分にもできるのではないか」「あの人も頑張っているのだから自分も頑張ろう」と思わせることができる。
 まずは短期の小さなプロジェクトを成功させて、社内の空気を前向きにさせよう。
 そして、DX推進リーダーは「兵」を知ること。孫子の言う兵とは戦争のことであり、その本質をつかめと教えてくれている。ここでの「兵」はDXでありデジタル活用による競争優位の確立である。その本質は、「限界費用ゼロでビジネスを拡大させる武器を手に入れ、その武器を使いこなすこと」にある。
 これを理解せずに、ただデジタルツールを導入し、社員にPCやスマホを持たせて業務を効率化すればDXだろうと考えていては、目先のコストダウンやスピードアップ程度の成果は得られても最終的な勝利には結びつかない。それでは「民の司命、国家安危の主」にはなれないのだ。
 DXの本質は、限界費用ゼロというデジタルの特性を最大限に活かすことであり、さらに顧客増、件数増、取引増によって固定費用の按分をもゼロに近づけるものだ。
 限界費用が分からない人は、会計の勉強もした方が良いが、簡単に言えば変動費のこと。デジタルを使うと、顧客が一軒増えたり、取引が一回増えても、追加的に発生する費用(限界費用・変動費)はほぼゼロである。だからIT企業は法外な利益を出しているのだ。デジタル化するとコストダウンが実現するのも限界費用がゼロだからだ。まずこのことを頭に入れておこう。
 但し、それだけでは固定費が残る。システムを導入したりデジタル化するための初期投資があり、その維持にも費用がかかるし、それを動かすための人件費も必要だから、すべてのコストが下がるわけではない。だがそれらは固定費なのだから、顧客増、件数増、取引増に伴って比例的に増えていくことはない。
 だからこそ、顧客増、件数増、取引増を進める。そうすると、固定費の按分が減る。一顧客当たり、一件当たりのコストが、数が増えれば増えるだけ減少し、やがてほぼ意識しなくても良いようになる。簡単な例で説明すると、1億円の固定費があっても、1億件の取引を限界費用ゼロでこなせば、1件あたり1円となって、ほぼコストは意識しなくても良くなるということ。だから世界中に何億、何十億というユーザーを持つグローバルIT企業は、莫大な利益を上げている。GAFAMはその典型例だ。
 DXとは、このデジタルの特性を自社の経営に取り込むことである。従って、業務効率を上げてコストダウンするといった内向きの生産性ばかりを考えるのではなく、顧客を増やし、取引件数を増やすためにデジタルを活用することを優先すべきなのだ。特に、中小企業の場合は、元々のコストの絶対額が小さいので、業務効率アップによるコストダウンを考えているだけでは成果が限定的で、デジタルの特性を活かし切れない。
 デジタル人材がいない中小企業は、営業DXから進めるべきであるというのは、こうした理由による。詳しくは拙著「売上増の無限ループを実現する営業DX」をお読みいただきたい。

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