孫子の兵法

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孫子×DX 焦らず確実に成果を出す

2024-05-07

 攻めのDXと守りのDXがあるとするならば、派手で目立つのは攻めの方である。大きな成果で社内を驚かせたいと考えてしまうのも無理はない。だが、ここで焦らずに地味でも良いから確実に成果を出すことを考えたい。
 戦争でも攻めと守りでは、攻めの方が派手であり手柄も挙げやすい。守りは地味であり出来て当然のように思われて評価もされにくい。前回、負けない備えをするようにと書いたが、これも同様に地味であり評価されにくい点に注意が必要だ。
 孫子はこんなことも教えてくれている。

<軍 形 篇>
 『古の所謂善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。故に善く戦う者の勝つや、智名無く、勇功無し。』
◆現代語訳
 「古くから兵法家が考える優れた者とは、容易に勝てる相手に勝つ者である。それ故、優れた者が戦って勝利しても、智将だとの名声もなく、勇敢であると称えられることもない。」
◆孫子DX解釈
⇒まずは確実に成果が出せるところから着手して成功を収める。できて当然だと言われるくらいでちょうど良い。DXは企業変革運動であることを知るリーダーが優れたリーダーである。功を焦ってはならない。

 優れた将軍は、勝てる戦しかしない。その見極めが事前に出来るところに優秀さの所以があるわけだ。だが、そのことを知らない一般人は、「そもそも敵が弱いのだから勝って当然じゃないか」と思ってその将軍を評価しない。反対に、勝敗の見通しが甘い将軍は、敵の方が優位であっても、勢いで戦争を始めてしまうことがある。勝負は時の運という言葉があるように、それでも何らかの要因で勝ってしまうこともある。すると一般人は、「あの強い敵に勝った将軍はすごい、優秀だ、勇敢だ」ともてはやすことになる。その将軍が凱旋してくれば拍手喝采である。このような道理も理解せずに、国王が一般人と一緒になって勝敗の見極めも怪しい将軍を評価しているようでは話にならないよと孫子は教えてくれているわけだ。
 優れたDX推進リーダーは、確実に成果が出せるところから着手する。それが業務効率アップやコストダウンであり、そのために「分散入力即時処理」体制を作るわけだが、地味でもあり、中小企業の場合はコストダウンの絶対額も大きくはない。一般社員も「DXって言っても、結局こんなものか」「紙が減ってスマホで入力するようになっただけじゃないか」といった反応をするかもしれない。まさに「智名無く、勇功無し」状態となる。
 全体像がつかめていない一般社員はそれで良いとしても、企業における国王である経営者が一緒になって「DXって他社ではもっと大きな成果が出ているのではないか」などと焦ってDX推進リーダーにプレッシャーを与えるようなことをしてはならない。
 デジタル化によって必ず成果は出る。他社の派手な成功事例に惑わされて、功を焦ってはならない。今は攻めに転じる前の守りの時である。守りのDXや確実に勝てる攻めのDXは地味で目立たない。経営者とDX推進リーダーがその重要性を共有し、意思疎通を図っておくことが大切である。DXは企業変革運動なのだから、ちょっとやってすぐに大きな成果が出たり、完結できるようなものではないのだ。功を焦ってはならない。

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